相方の満月ちゃんより




Happy Birthday from Buddy.

「そんなにくっつくなって!見られたらどうするんだ!?」

 出来る限り静かに、それでいて精一杯の声を張り上げて虎徹は訴えた。

見慣れぬ天井を見上げ、片手にはバラの花束を抱えている。
何とも不思議な状態であるが、この状況を作り出したのは他でもない自分自身だった。

溜息をつき、もう一方の腕の中にいる恋人を宥める。

「虎徹さん、もう寝ましょうよ。僕、疲れました。」

「いつもはこの時間に盛ってるだろ。あの体力はどこに行ったんだ?」

「だって、さっきからゴロゴロしてるだけで退屈ですし・・・。」

頬を膨らませた顔を胸元に寄せ、バーナビーが擦りついてくる。
終えたばかりの出動の興奮が冷め、気が緩んできているのだろう。
間近に感じる体温に、虎徹自身も瞼が下がってきていた。

仕事を終えたのが定時を少し過ぎた頃。
久しぶりに夕食を外で済ませ、二人で買い物をした。
街中を歩きながら時計を見れば、次の予定に向かうのにちょうどよい時刻だった。

だが、そんな穏やかな時間は出動要請のコール音に掻き消される。

「大事な用事がある時に限ってこれだよ!どうして犯罪者は空気を読んでくれないのかね?」

「空気が読めたら犯罪なんて犯しませんよ。一気にカタを付ければ間に合います。」

 まだ顔も見ぬターゲットを罵りながら、出動の準備をする。
ダブルチェイサーに乗り込むと、そこから先はあっという間だった。
バーナビーの華麗なハンドル捌きとタイガーのワイヤーワークにより、事件は無事に早期解決。
鮮やか過ぎて、アニエスに文句を言われる程だった。

長々と付き合わされたヒーローインタビューから再びトランスポーターに直行すると、時間は日付が変わる10分前。
トランスポーターを使っての移動ではとても間に合わない。
チェイサーでもギリギリの時間だった。

「だっ!ヤバい!遅れちまう!」

「着替えは無理ですね。ひとまず荷物を確保しましょう。」

 慌ただしくトランスポーターに乗り込み、買ったばかりのものを持ち出すと、虎徹はバーナビーにそれを差し出した。

「能力は使っちまったばかりだし、ワイヤーで飛ぶぞ。バニー、これ持っててくれ。」

 赤いヒーロースーツを着たままのバーナビーは腕を組んで考え事をしている。
そして、何かを思いついたように動きだすと、差し出された荷物ごと虎徹を抱き上げた。

「僕が跳びます。それ、両手でしっかり持っててくださいね。」

 1分1秒でも惜しいのか、バーナビーは返事を待たずに夜の空へと跳んだ。

 ネオンに輝くビル群を抜け、住宅街へ向かう。
ヘルメットに内蔵されたナビに従い、最短ルートを走った。
目的のアパートが見えてくる。トップスピードのまま飛び込んだせいで、最後の着地が前のめりになる。
バーナビーにしては珍しいミスだった。それ程に、今夜の予定は二人にとって大切だった。

「わっ!あっと言う間だったな。バニーちゃん、すげー!」

「あと10秒ですよ。虎徹さん、急いで!」

「だぁっ!」

 無事に着いた喜びもつかの間、慌ただしく目的の部屋の前へと向かう。
バーナビーに抱えられたままの虎徹が呼び鈴を押したのは、まさに日付が変わった瞬間だった。

「ハッピーバースデー!桃ちゃん!」

「桃っぽいさん、おめでとうございます。」

 開いた扉から覗く顔は驚きを隠せていない。
それもそうだろう。スーツを着たままのヒーローが、バラの花束を抱えて突然深夜にやってきたのだから…。

「しっかし、めちゃめちゃ喜んでくれてたな。キャーキャー騒ぐから、ご近所さんに怒られるかとヒヤヒヤしたぜ。」

「サプライズ成功ですね。着替える間も無かったですけど、何とか間に合いましたし。」

「ある意味、正装で来たってことか?俺達、ヒーローなんだし。」

「桃っぽいさんは大のヒーローファンですからね。結果オーライということで。」

 天井を見つめたまま、つい先ほどのことを思い出して笑う。
それに合わせ、胸元のバラも静かに揺れた。

「この花束も、無事に運べて良かったな。バニーちゃんのお蔭だ。」

「ワイヤーで飛ぶなら、どうしたって片手でしか抱えられませんでしたからね。お蔭で、貴方をお姫様抱っこできるいい口実になりました。」

「お前、本当にお姫様抱っこ好きだよな。」

「貴方限定ですけどね。…で、どうしてプレゼントに花束を?」

 虎徹にしては珍しいセレクトに、バーナビーが問いかける。

「ん?前にさ、桃ちゃんが言ってたんだ。ピンクのバラの花束を貰って嬉しかったけど、持って帰るのがちょっと恥ずかしかったってな。」

「だから今回は、直接届けに?」

「おう、名案だろ?」

 ええ、貴方にしては。
口にしそうになった言葉を、バーナビーが飲み込んだ。代わりに不満を口にする。

「でも、一晩添い寝まではしなくても…。せっかくの貴方との貴重な時間が削られるなんて嫌です。」

「そんなこと言うなって。桃ちゃんにはいつも世話になってるだろ?今日だけだからさ。」

「でも、まだ来ないじゃないですか。せっかく来たのに…。」

 彼女は大量にやってくるお祝いのメッセージをチェックするのに忙しいらしく、かれこれ数時間パソコンに向かっている。
その間にシャワーを借り、客間で転がって待っていた。

いつものベッドより小さな布団は、大柄な自分たちには少し狭い。
隣に敷かれた布団に移ろうと思ったが、バーナビーの腕は簡単には離してくれそうになかった。

虎徹とて、大好きな恋人と密着するのが嫌な訳はない。
だが、ここは人様の部屋であり、自分たち以外の人間がいる。
胸元を直に滑る手の感触に、今度は虎徹が抗議をした。

「お前、何してるんだよ。今日は駄目だって。」

「いいじゃないですか。今は誰も見ていないんですし。」

「桃ちゃんがいつ来るかわかんねーだろ?見られたらどうするんだ?」

「どうもしないですよ。彼女が喜ぶだけです。」

 きっと、先程のように嬌声を上げるに違いない。
自分のアパート事情を考えると、これ以上の大声は避けたいところだ。

「俺は恥ずかしいの!明日はお前の好きにしていから、今夜は大人しくしてろよ。」

「本当ですか?」

「ああ。お前のお蔭で、こうして桃ちゃんのお祝いができるんだしな。」

「……何か妬けますね。僕といるのに『桃ちゃん、桃ちゃん』って。」

 上目使いをしながら、バーナビーが拗ねる。
身も心もこれだけ許していながらもヤキモチを妬く恋人に、虎徹の目尻が下がった。

 生乾きのブロンドに指を差し入れ、頭を抱き寄せる。

「まったく、しょうがねーなー、バニーちゃんは。」

「それだけ貴方が好きなんです。もっと僕のことだけ考えてください。」

「ああ、考えてるって。」

「今は何を?」

「んー、そうだな。バニーちゃんは可愛いなー、とか?」

「可愛いのは貴方です。」

「そうかぁ?そうだ、バニーちゃんって甘えん坊だなー、とかも思うな。」

「嫌ですか?」

「いーや、嬉しい。俺、バニーのこと大好きだからな。」

「僕もです。」

「そうか?それは良かった。」

 素直に口にした言葉に、ブロンドの髪が胸元をくすぐって答える。
肩や腹部に回された腕に力が籠められ、虎徹はバーナビーの腕の中に納められる。

「お前の誕生日だって、すげー待ち遠しいんだからな。楽しみにしてろよ。」

「はい。」

 目を細めて嬉しそうな返事をする恋人を、虎徹は愛おしさを込めて抱き締めた。

 彼女が部屋にやってきたのは、それからしばらくしてからのこと。
幸せ気分のままイチャイチャしていた二人を見てどれほど絶叫したのかは、想像するに容易い。

Fin.

満月さんへ

ムーたんありがとう!
想像するだけでhshsしまくりんぐです!
二次元の世界に私がいるだなんて幸せすぎます。
きっと、この私!今の私と変われ!と大声で言ってしまうぞw
口から果汁だしまくって覗き見してることでしょう。

「どうぞどうぞ、私におかまいなく続きを・・・えへっえへっえへっ」

幸せなバディをありがとうございます(*´ω`*)
そしてこれからもよろしくおねがいします♥

果汁垂れ流しの桃より

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白桃花-別館- 誕生日ギフト 『Happy Birthday from Buddy.