白桃花-hakutouka- ウェブカレ日和 (ウェブカレ二次創作)


文章/天さん  イラスト/桃っぽい           仮校舎公式イベント(2011年10月)




「トリック・オア・トリート!」

生徒会の用事で薫くんと繁華街に出かけたら、魔女の恰好をした小さな女の子に突然声をかけられた。

―え?

あたりを見回すと、ハロウィンの集まりなのか、色とりどりの恰好をした子供連れのお母さん達が公園に居る。

―子供会か何かなのかな?

「トリック・オア・トリート!!」
黙ったままの私達に、女の子が手を差し出しながらもう一度叫んだ。

「えっと…ちょっと待っててね」
慌てて鞄の中を探すが、今日に限って一つもお菓子が入ってない。

「どうした?」
「あげられるお菓子が無くって…」
「ああ、それなら、俺があげよう」
そう云って、薫くんは鞄の中から綺麗にラッピングされたクッキーを取り出し、女の子に渡した。

「ほら、これをどうぞ」
「お兄ちゃん、ありがとう!」
女の子は満面の笑みを浮かべて、母親らしき人の元へと駆けて行った。


「どうした?そんな顔をして」
女の子を見送った薫くんが、私を振り返って不思議そうに尋ねた。

「…だって」
「だって?」
「あの女の子に渡してたの、薫くんの手作りでしょう?」
「まぁ…そうだが」
「何で持ってるの?」
「何でって…ハロウィンだから、生徒会の皆にやろうとおもって昨夜…」
「ずるい!」
「…は?」
「私だって薫くんの作ったクッキー、食べたい!!」

なんだ、そんなことか、とでも云いたげな薫くんの顔つきが悔しくて。

「トリック・オア・トリート!」
大人げないな、と思いつつも、薫くんに向かって叫んだ。

「すまないが、クッキーはさっきので最後だったんだ」
「え?」
「本当にすまない」
心底申し訳無さそうな薫くんが、また腹立たしくて。

―八つ当たりだって分かってるのに謝らないでよ!

そう思いながら、唇を軽く噛んで黙り込む。

「そのかわりと云っては何だが…」
「…?」
「悪戯してくれていいぞ?」

―え?

「ほら」

―…って…ど、どうしよう…

「えっと…」

―薫くん、本気…なのか…な…

上目遣いに、薫くんの表情を盗み見る。

「どうした?」
そう云いながら、にっこり笑ってるんだけど…その微笑みが…

―なんだか怖いよぅ…

「…やめとく」
「どうした? トリック・オア・トリートなんだろう?」
「だって…」
「ん?」

―だから、怖いんだってば!

なんて、云える訳も無く。

「…やっぱなんでもない」

どうしていいか分からず俯いたままの私の肩に、薫くんの手が伸びてきた。

「君を見てると、本当に飽きないな」
ちょっとだけ笑いを含んだ声でそう云うと、私の耳元で囁く。

「目を…閉じてくれないか」

―って! ぇえええ!!!!

どくん、と心臓が跳ねた。
云われるままに、ぎゅっと目をつぶる。

「ほら」
くすり、と笑った様な声がすると同時に、ぽん、と頭に何かが乗せられた。

「え?」

「お菓子だ」
慌てて頭に手をやると、そこには可愛くラッピングされたマフィンが。

「…えっと、コレって…」
「クッキーは最後だ、って云ったろう?」
そう云って、薫くんはにやりと笑って更に追い打ちをかける。

「ん?風邪か?顔が赤いぞ」
「…っ! 薫くんのバカ!!」
真っ赤になって叫ぶ私を楽しそうに見ながら、薫くんは手を差し伸べてきた。



「ほら、用事を済ませに行くぞ」

―うぅ…

おずおずと手を差し出すと、ぎゅっと力強く握り返された。
繋がった手から、薫くんの温もりが伝わってくる。

―まぁ、いっか…

「用事が済んだら、何か奢ってよね」
「それよりも、家に来ないか? 試作品のお菓子が沢山残ってるんだ」
「ホント!?」
「ああ、君が食べてくれると助かる」
「おっけー!任せといて!!」

そして、私達は手をつないだまま歩き出した。



Fin


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