白桃花-hakutouka- ウェブカレ日和 (ウェブカレ二次創作)


文章/かおるさん  イラスト/桃っぽい           仮校舎公式イベント(2012年5月)


テスト前、君と喧嘩をした。
事の発端は遠足の話。
「薫くん、テスト明けに遠足があるね。」
「…そうだったか?そんなことよりも問題に集中しろ!赤点取りたいのか?」
「頑張ってやってるよ!そんな言い方しなくてもいいでしょ?」
「大体君はすぐ他のことに気をとられて…」
「もういいよ!私帰る。」
「な!?おい!?」
「遠足楽しみだったから、それを励みにテスト頑張ろうって思ってたのに、薫くんのバカ!」

女心というものはわからない。
小学生でもあるまいに山歩きをそんなに楽しみにするなんて。
俺はむしろ参加したくない位なのだが。
『テストの結果が良ければ、遠足の日に褒美をやる。』
我ながら素直じゃない。彼女に謝るメールの筈がコレだ。
もう少し甘い言葉のひとつでもさらっと言えればいいのに。

遠足前夜、君の笑顔を想像しながらカップケーキを作った。
お弁当も分けられるように少し多めに用意する。
天気も上々で、清々しい五月晴れだ。
君と一緒に楽しくハイキングができればよいのだが。

「おはよ、薫くん。」
「おはよう。」
「良い天気で良かったね。」
「そうだな。」
「ご褒美って何?」
「テストの結果が良ければと言っただろう?どうだったんだ?結果。」
「…悪くはなかったよ…。」
彼女はそう言いながらむくれる。
ああ、また機嫌を損ねてしまった。
「昼食、一緒に食べないか?カップケー…」
話している途中で女友達がやってきて彼女を連れて行ってしまった。

そのまま彼女と別々に山を歩き始めた。
友達たちと楽しそうに話ながら先を歩く君が遠く感じる。
背中のカップケーキが重く感じる。

日頃の運動不足がたたり、歩きなれない山道で早々にバテてきた。気が付いた頃には最後のクラスの連中と一緒になっていた。
…もう君はだいぶ先のほうまで進んでいるだろうか…
ある意味、君にカッコ悪いところを見せなくて済んでよかったのかもしれない。

◇◆◇

あーあ、薫くんと一緒に歩きたかったのになぁ…。

友達との会話もなんとなくあわせているけど上の空だ。

薫くん、怒ってるかなぁ…。
お昼、一緒に食べよって誘ってくれたのに、返事しないままにしちゃって…。
いつも薫くんを怒らせてばかりだから悪いなって思ってたのに…。

「きゃ…!」
考え事のせいでバランスを崩し、道を踏み外してしまった。
幸い近くに居た友達に腕を引かれて、落ちずには済んだ。
が、足首を捻ってしまったようだ。
「ありがと!痛っ…」
「大丈夫?」
「あ、うん。ちょっと捻っちゃったみたい。しばらくしたら歩けると思うから、先に行ってて。」

しばらく休んで歩き出したけれど、やっぱりちょっと痛くて、さっきの速さでは歩けない。
いろんな人にどんどん抜かれていく。
知らない人ばかりになってきて心細い。

「おい。」
「あ!薫くん!」
そうこうしているうちに、彼が追いついてきた。
いつもポーカーフェイスなのに、今日ばかりは辛そうな表情を見せている。
「どうしたんだ?先に行っていると思ったのだが?」
「あぁ、ちょっとね。最初から張り切りすぎちゃって、バテちゃった。」
「そうか。」

◇◆◇

彼女と並んで歩く。
もしかして俺を待っていてくれたのか?と嬉しく思ったのだが、気のせいだということがすぐに分かった。

「おい、足、どうかしたのか?」
「え?なんでもないよ?」
「嘘をつくな。さっきから左足をかばって歩いているだろう?」
「あ…さっきちょっと捻っちゃってね。大丈夫なんだよ。」
「ほら、足を見せてみろ!」
「や、ヤダってば!」

他の生徒の目も気にせず、彼女を座らせて裸足にした。
「腫れてるじゃないか!この足では歩くのも辛かっただろう?」
鞄から湿布を取り出して貼り付け、テーピングを施す。



「か、薫くん…。リュックにこんなの入れてたの?」
「あ、ああ。備えあれば憂いなしというからな。」
「他に何が入ってるの?」
「…消毒セットに裁縫セット、頭痛腹痛の薬、非常食と雨具とペンライト…」
「ぷっ!!そんなの入れてたら重たいわけだよね。歩くの辛かったでしょ?」
「うるさい!お陰で助かっただろう?」
「うん。ありがと、薫くん。ぷ、くく…」
「歩けるか?…笑うな!!」
照れる俺を尻目に君がカラカラと声を上げて笑った。

程なくして視界が開ける。
湖でのボート遊びが今回の遠足の醍醐味だ。
水面が太陽の光でキラキラと光り、水分を含んだ空気は木々の緑の匂いがする。

「わぁ!きれい!!」
「あぁ、そうだな。苦労して歩いてきた甲斐はあったな。」
「ボート乗りたい!」
「君は足を捻挫しているんだから、やめておけ。」
「えぇー、そんなぁ。」
「ボートには乗せてやれないが、そのかわり、ゆっくり昼食を取ってからお茶の時間にしないか?」

適当な場所にシートを敷き、皆がボート遊びに興じているのをしばし眺める。
羨ましそうに湖を眺める君と会話が続かなくなって、お弁当を広げた。
「ほら、食べようか。」
「わぁ!薫くん、おいしそうなおかずが入ってるね!」
「ああ、君に分けてやろうと思って多めに作ってきたんだ。」
二人で並んで食べる。
アスパラベーコンやチーズフライを分けてやった。
そして食後の紅茶とカップケーキ。
「薫くん、美味しい!ありがとう!」
「君のその顔が見たかったんだ。…その、いつも素直じゃなくてすまない…」
「…私もごめんね。」

喧嘩してからあまり話していなかった分を取り戻すかのようにお弁当やケーキのレシピの話、周りに生えている植物の話をたくさんした。
しばらくして向こうから先生の集合の声が聞こえてくる。

「そろそろ出発だな、君の笑顔を見て元気になったことだし、もうひと頑張りするかな。」
「リュックもちょっと軽くなったことだしね。」




Fin


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